NGNは「オンデマンド性」に高い利用価値

企業にとって、NGNの利用価値はどこにあるのか。NEC次世代ネットワークサービス推進センターの三栖センター長に聞いた。

NTT東西のNGN商用サービス開始と同時期の2008年3月、NGNを活用したサービスやビジネスの創出・実現を目的に、NECが中心となって発足した「NGNミドルウェアパートナープログラム」。IBM、オラクル、HP、マイクロソフト、シスコ、昭文社など、パートナーは現在17社を数えるが、この約1年半でどのようなNGN活用サービスの可能性が見えてきたのか――。NECの三栖利之氏は、(1)音声・映像系、(2)データ系、(3)API活用付加価値系の3つに分類して説明する。

(1)音声・映像系については、SD/HD品質のテレビ電話サービスがすでに提供されている。従来、高画質映像コミュニケーションには、高価な専用線が必要だったが、NGNなら専用線なしで手軽に実現可能だ。NECは今年4月、多目的ビデオステーション「NC1000-MV」をNGNに対応させたが、すでにNGNでの活用例は複数あり、また引き合いも数十件に上るという。「社外とのテレビ会議や遠隔販売、健康相談、教育など、電話をかけるようにオンデマンドでテレビ会議を行いたいというニーズはかなりあると分かった」

このほか、コンタクトセンター向けのビデオIVRなど、NGNのメリットを活かした映像系サービスは今後いろいろな広がりを見せていきそうだ。

(2)のデータ系でも、帯域確保型のデータ通信をオンデマンドで利用できるメニューが近い将来投入される予定だ。そこでNECでは、今あるIT系のアプリケーションを大きな変更なしにNGNへ移行するための仕組みを開発中だという。

「使いたいときだけ従量課金で高品質・高セキュリティのデータ通信サービスを利用したいという企業の需要はある。従来の専用線は企業内の通信に閉じていたが、オンデマンドで使えれば企業間のデータ通信にも利用できる」

また、パートナープログラムに参画している昭文社は、NEC本社にあるNGN評価センターで、帯域確保型の地図情報配信実験を行ったという。

新API「NGSI」を標準化

(3)API活用付加価値系はNGNの特徴の1つであるオープンなインターフェースを活かしたサービス。サードパーティのプレイヤーが、APIを介して公開された網機能を使って実現するものである。NGNの本格的なオープン化はこれからだが、そのときに向け、NECはパートナープログラムを通じて精力的に活動している。

IT系の開発者などでも容易にNGN活用サービスを開発できるよう、「NGNミドルウェア共通API」を昨年9月に策定し、標準化団体のOMAにNECより提案。現在OMAで「NGSI(Next Generation Service Interface)」という規格名で標準化作業が進められており、今年度内にバージョン1.0の仕様策定が完了する見込みだという。

テレコム向けAPIとしてはParlay Xがあるが、NGSIはその後継となるもの。「Parlayのマルチメディア機能を拡張しているほか、コンテキスト管理やサービスレコメンデーションなどパーソナルサービス向けの機能を新たに加えている」という。オープン化が今後のテレコムサービスの鍵を握るというのは、世界的な共通認識だが、その実現に欠かせないAPIの整備も着実に進展しているようだ。

「今後もパートナープログラムでは、世界に先駆けて商用サービスを開始した、このNGNにこだわって活動したい。パートナー各社とNGNらしいソリューションを創って具体化し、共同で提案しに行こうと話している」と三栖氏は意欲的だ。

月刊テレコミュニケーション2009年11月号から転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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